雨のリフレイン
「洸平さん。私…。
私のこと…。
私のことをす…ごく気にかけてくださって、感謝してます。
でも、四月からは洸平さんは横浜新医療センターで勤務です。婚姻関係を結んでおく必要はないんじゃないかと。
解消する必要も、ないんですけど」


頑張って言葉にしようとしたけれど、私のこと好き?とはやっぱり、聞けない。
柊子は自分が情けなくなる。


「それは、横浜で新しい出会いでもあるんじゃないかって心配してる?
そんな余裕ないから。
それとも、柊子、他に好きなヤツでも出来た?」

そう尋ねられて、洸平がプロポーズのときに“他に好きな男が出来れば勿論速やかに婚姻関係は解消する”なんて言っていたと、思い出す。

柊子に他に好きな男ができれば、さっさと手放す。彼の気持ちはその程度なのかもしれない。
そう思えて、みるみる気持ちが萎える。


「私だって洸平さん以上に余裕ありませんよ。
では、継続して下さい。
そうですね…出来たら、母が亡くなる時まで」


それは、たぶんこれから起きる未来の中で予測できる柊子の一番辛い時。その時には絶対に側にいてほしいから。

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