雨のリフレイン
目の前に、まだ湯気の立つコーヒーと、手のつけられていないケーキが二人分あった。



怒らせて、しまった。
信じていないと言われてしまった。

でも。
信じていろっていうけれど、家族だと言ってくれるけど、洸平は一度も柊子を『好き』だと言ってくれなくて。
それなのに、何を信じろというのだろう。
子供も要らない。普通の結婚生活も望まない。
そもそも、母の治療費の為とか、代理手続きが出来るとか、柊子の未来に投資するとかそんな理由で結婚することになったのに。

柊子は、たった一言が欲しかっただけ。たった一言、「好き」だと言って貰えれば安心できた。
好きだから、一緒にいたい。好きだから、家族になりたい。
今は洸平の気持ちが見えなくて、ただ不安で、不安でたまらない。

泣きたいのを我慢して、柊子はコーヒーに口をつけようとした。

だが、匂いだけで、気分が悪くなる。
いつもなら大好きなケーキも、なんだか食べたくない。


ーー帰ろう。


なんだか、とても疲れた。
体も重い。もう、何も考えたくなかった。






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