雨のリフレイン

想定外の出来事

日々は夢中で過ぎた。暦は六月になっていた。
緊張と疲労で体は悲鳴をあげていたけれど、洸平の事を忘れさせてくれるほど毎日充実していた。


「柊子、顔色悪いわよ?頑張り過ぎじゃない?」


やっともらえた休日。
死んだように眠り、起きてきた娘の様子に母が心配そうに声をかけた。

「今、頑張らなくて、いつ頑張るの?
大丈夫。体力はあるから」
「お腹空いたでしょ?
もうすぐご飯炊けるから。柊子の好きな豚の生姜焼きでも作るわ。せめて、スタミナつけなさい」

正直、あまり、食欲もない。
だが、せっかく母が準備してくれたからと思った時だった。
炊飯器から上がった蒸気。
いつもならご飯の炊けるいい匂いだと思うのに。

「ちょっと、柊子!?どうしたの!」

慌ててトイレに駆け込んだ。
母が後を追ってきて、背中をさすってくれる。

「大丈夫?全部、吐いちゃいなさい」



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