雨のリフレイン
喜ぶ母は、病院の予約も来院の準備も全て手際よくしてくれた。
柊子は、何も考えられない。母に引きずられるように受診して、決定的な言葉を告げられた。



「おめでとう、柊子!
洸平くんも絶対喜ぶわ。早く知らせなきゃ」

病院で会計をしている間にも洸平に電話しようとする母をかろうじて止める。

「お母さん、落ち着いて。
まずは、帰ろう?向こうは、仕事中よ、電話になんて出ないし、周りにも迷惑よ」
「あ、そうね。私、嬉しくって。
それにしても、柊子ったら生理不順だったとはいえ、ここまで気づかなかったなんて。今年の冬には私もおばあちゃんね」


考えなくちゃならない事が沢山ある。
まず、仕事はどうする?
ナースになりたてで妊娠したなんて、言えない。そもそも結婚してることさえ、公表してないのに。
それより、何より、洸平だ。
子供は必要ないと、明言していた。
どうしよう。どうしよう。
こんなこと、想定外すぎて、頭がついていかない。




< 213 / 302 >

この作品をシェア

pagetop