雨のリフレイン
「ちょっとお待ち下さい」


柊子はとりあえず携帯電話で母に電話する。

『えっ!?後妻の!?何の用かしら』
「わからない。でも、私が犯罪者だって言うの」
『頭おかしいんじゃないの?いいわ、お母さんも一緒に会う。今から出るから。マンション隣の喫茶店にいて』

母の頼もしい助言に従うことにした。


「…では、そこの喫茶店に。母も後から参ります」

柊子は鈴枝を連れてマンションの隣、全国チェーンの喫茶店に向かう。
個室はないが、4名席ずつ区切られていて、周囲をあまり気にせずに済む。

母は、すぐに来てくれた。
柊子の妊娠がわかってから、母の体調はすこぶる良い。今も足取りは軽やかだった。


「改めまして、わたくし、水上洸平の亡き父の妻で鈴枝と申します。本日は、多忙な洸平さんに代わって参りました」
「…初めまして」


帽子とサングラスを取った彼女は、頬や目元はたるみ、シミシワを隠すためかおそろしく暑化粧。
なんだか、迫力がある。

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