雨のリフレイン
「驚きましたわ。洸平さんがわたくしに言わず、入籍していたなんて」

「…すみません」

後妻のことは洸平に聞いていたが、血の繋がりはないにしても、母親には違いない。知らせるべきだったのかも知れないと、柊子は素直に謝った。

「でも、形だけみたいね。実際洸平さんは今横浜でもう三カ月以上こちらには来ていない。
あなたは、学生時代から浮いた話の一つもない、当然彼氏すらいないって、あなたの学生時代のご友人に聞いたわ」

柊子の学生時代の友人の証言や洸平の動向を把握している。

「…調べたんですか?」

「だって、気づいたらいつの間にか水上家の戸籍に見知らぬあなたのお名前があったのよ?誰なのか知る権利はあるでしょう」

誰に聞いたのだろう?どう尋ねたのだろう?いつから調べていたのだろう?
知らぬ間に身辺調査をされていたと思うと身震いがした。

「結婚生活もまともに送っていなくて、籍だけ入れてあるなんて。詐欺じゃない。そんな結婚無効よ。
父親を高校生の時に亡くされて、お金に困っているんでしょう?洸平さんの優しさにつけ込んだわね?」

「詐欺って、そんな。たしかにお金に余裕はないけれど、別に困ってやしないわ」

信子が言い返してくれる。

ただ、まともに結婚生活を送っていなくて、洸平からの連絡も途絶えている今、柊子には何も言えなかった。


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