雨のリフレイン
「洸平さんに、とっても良い縁談の話があるの。
横浜にある大きな病院のお嬢様よ。結婚すれば大病院の院長になれるの」

なるほどと、納得する。
縁談が持ち上がって、初めて柊子の存在を知り、慌てたのだろう。


「…洸平くんは、何て?」

信子の問いに、鈴枝は二人を見下すような目を向けた。

「横浜に行ってから、こちらに来ていないでしょう。忙しくても、休みはあるのに。あなた方に会いたくもないんですよ。それが、答え」
「…?!」

この女性の言葉を鵜呑みにしてはいけない。
わかっていても、柊子の不安は掻き立てられる。


ーー結局、柊子は俺を信じていないってことなんだよ。


目の前の女性の言葉なんかじゃなく、洸平を信じたい。


「よかったわ。子供でもいたらお相手の方にもご迷惑をかけてしまうし、なにより、財産分与に困るところだった。
今なら、慰謝料もお支払いするわ。あなたが必要なだけおっしゃって」
「まぁ、好き勝手言ってくれるじゃない。
言っときますけどね、二人はちゃんと夫婦です。そりゃあ今は忙しくてすれ違いも多いですけど」


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