雨のリフレイン
見捨てないで
その頃。
柊子と信子は、名古屋の三浦総合病院の特別室にいた。
信子は、思いもよらぬ長距離移動に疲れ果てよく眠っている。
「びっくりしたわ。こんな状態でここまで来るなんて」
ベッドから少し離れた応接セットのソファに向かいあって座った三浦香織に、柊子は深々と頭を下げた。
「受け入れしてくださって、ありがとうございました」
「それはいいんだけど。
弁護士から連絡あった時は驚いたわよ。水上先生もあなたも大変ね」
その時、病室のドアがノックされた。入ってきたのは、香織の夫となった三浦團だ。
「大学病院からの紹介状を読ませてもらったよ。頑張っているね、お母さん」
團は香織の隣に座る。
「しかし、水上も本当に大変だな。柊子さん、大丈夫かい?君も顔色が良くないよ?」
「さすがに、ちょっと疲れました」
柊子が浮かべる笑顔もいつもの元気はない。
「水上先生への連絡も弁護士を通しておいたわ。
大丈夫、きっとすぐに解決するわよ。元気、出して?」
香織の励ましに小さく頷いた柊子の顔には、疲労と不安がありありと浮かんでいる。