雨のリフレイン
『…柊子?』

電話越しに聞こえたのは、紛れもなく洸平の声だ。嬉しくて嬉しくて、声が詰まって出てこない。

『柊子?』
問うような口調で再び名前をよばれる。

「…はい」
やっと絞り出した声はひどくかすれていた。

『あぁ、よかった。無事か?』
電話の向こうでホッとしたような洸平の声。

「はい」
『本当に、すまない。君たちに迷惑かけてすまない。怖い思いをさせてすまない。
会って話したかった事ってあの女のことだったんだな?もっと早く手を打てばよかった。
今、どこにいる?大丈夫なのか?』

ひたすら謝る洸平。
こんなに謝る洸平なんてなんだか怪しいと、不意に思った。すると電話越しの声にも自信がなくなってくる。

これは、本物の洸平なのか、と。鈴枝の罠なんじゃないかと…


「もう、放っておいて下さい。
私には水上家なんてどうでもいい。水上家がどれほどのものか知らないけど、私の両親を侮辱して、私を貶して…そんな家、こちらから願い下げです。
私は洸平さんが好きだっただけなんです。洸平さんと家族になりたかった。
それが許されないなら、もう、放っておいて…」

『俺は、絶対に別れない』

ハッキリとキッパリと告げた声に、ハッとなる。


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