雨のリフレイン
「大丈夫ですかっ!」


飛び込んで来た救急隊員。その姿にホッとしながら、柊子は、彼にサッと近寄った。


「運転手さんが、心肺停止の状態です。
潰れた車体に挟まれていて、私にはどうしようもありません。
乗客は、運転手を含め8名。
意識がない運転手さん以外の方は、私が状況を確認してメモをお渡ししてあります。お年を召した方から救助願います」



「あなたは…?」

首をかしげる救急隊員に、柊子はポケットに入れていた大学病院の身分証を提示した。

「私は看護師です」


「そうでしたか!
助かります!」


柊子は自分以外の7名が次々と救助されるのを見守った。
救急隊員に手伝いを求められれば、率先して手を貸した。


「さぁ、あなたも」


最後に、救急隊員が柊子に声をかけた。


「ありがとう、素晴らしい看護師さん!
でも、あの看護師さんが一番最初に治療を受けなきゃダメよ!」


柊子がバスを降りた時、先に救急車に乗っていた山口瑠璃子が柊子を指差して叫んだ。


「え?
あ!!しっかりしてください!!」


柊子の視界がぐらりと、揺れた。
前を行く救急隊員の腕を思わずつかんで、転ばないようにするだけで精一杯だった。





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