雨のリフレイン
「…眠れないの。
お薬飲んでも、眠れないの。
特にお母さんが夜勤でひとりぼっちの夜は、この世に自分一人になってしまったような気がして、怖い。
お父さんとの思い出が頭の中で駆け巡って。もう二度と会えないんだって悲しくなる。
思い出ってツライよ。どうせなら思い出は少ないほうがよかった。
お父さんって、ウザいって思ってたけど。
居なくなってわかったよ。
意外と、頼りにしてたんだなぁ、私」
「なるほどな。思い出は少ない方がよかった、か」


水上がおもむろに柊子の頭をポンと叩いた。


「受験生。
眠れないならいっそのこと勉強しろ。思い出に浸る時間も惜しんで勉強しろ。
看護師になるんだろ?
静かで勉強には最適だ」
「えー!勉強⁈やだぁ」


顔をしかめる柊子。


「優しさの裏の憐れみが私を苦しめるの。かわいそうとか、頑張れとか。
先生は、それを言わないから。
だから、好きよ、水上先生」


ニッコリ微笑んだ柊子の笑み。
歪みなどない、彼女本来の元気な笑顔が戻った。


水上はフッと笑った。


「俺は、向いてると思うよ、看護師。
君は、優しい子だ。命の大切さも知ってる。
患者だけでなく家族の苦しみにも寄り添えるなら、患者も安心できるだろう。
家族の思い出に少しでも救いが残る。悲しい、苦しいだけが残された思い出だと、辛すぎるからな」

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