雨のリフレイン
頭に巻いた包帯が痛々しい。
洸平は、手にしたぼろぼろの母子手帳を広げた。
表紙のすぐ裏にカバーに挟んであったのは、胎児のエコー写真だ。
すでに妊娠7ヶ月で予定日は12月。
身に覚えがある。柊子が国試を終えた後だ。三浦と山岸の復縁を見守って、ホッとして。我を忘れるほど女の子を夢中に抱いたのは、後にも先にもあの時だけだ。


柊子が洸平に話したいと言っていたのは妊娠のことだったのだ。


最初に話がしたいとメッセージが来た二ヶ月前。
ついに来たと思った。もう、終わりだと。

あの日、柊子の卒業式の日。自分を信じてくれない柊子に苛立ち、子供のような癇癪を起こして彼女をレストランに置き去りにしてしまった。外は雨も降っていたのに。

きっと柊子は愛想尽かしたのだと思った。柊子がそうしたいなら結婚に期限をつけても今すぐ籍を抜いてもいいなんて言ってしまった洸平に。
あの時は、愚かにもたかをくくっていたのだ。柊子は自分の事が好きなのだから、この婚姻関係にしがみつくに違いないなんて。


< 270 / 302 >

この作品をシェア

pagetop