雨のリフレイン
「柊子ちゃん!
あ、おいっ!お前、何してたんだ!
柊子ちゃん意識戻ってるぞ」

翔太の声が、遠く感じる。
とにかく頭は痛いし吐きたいし。柊子は口を押さえながら、体を起こそうとした。

「待て、急に動いちゃダメだ。ゆっくり。
俺の白衣にそのまま吐いても構わないから」

柊子の体が慌てて押さえ込まれる。
ゆっくり、体を横向きにされて、吐いたものが詰まらないように、顎を上向きにされた。
朝から、あまり物を食べていない。だから、口から出てくるのは苦い胃液ばかりだ。

「薬は?いつ入れた?…そうか。
じゃあ、吐き気が落ち着き次第、入院病棟に」

後ろ姿がぼんやりとしか見えないが、看護師に指示している声が翔太と違う。


「洸平、お前、今日はこれで上がれ。
上司命令だ。お前は被害者家族なんだ。仕事より柊子ちゃんに寄り添っててやれ、いいな?」

「…被害者家族…そうか、思いもしなかったな」

「だーかーらー、お前はダメなの。
一番は柊子ちゃんだろ?」


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