雨のリフレイン
窓の外は、きらきら輝く横浜の夜景。
ガラス窓に残る無数の雨粒越しの夜景は、ぼやけて見えた。

「綺麗な街ですね」
「あぁ。ぼやけて見えるけどな」
「雨のせいですよ」

そう言いながら柊子はそっと洸平の目尻に浮かぶ涙を拭った。

「子供が生まれる前に、二人きりでデートしたい。それから指輪も買わなきゃな。キチンと結婚式して、公表する。君が俺の妻だと。
これから生まれる子供の為にも…。
あぁ、君としたい事が次々に思い浮かぶ。
書類一枚で結婚したなんて、それで君を手に入れたつもりになって、俺は何て馬鹿なんだ。
ごめんな、柊子。これから、挽回させて。

…お腹、触ってもいいか?」

「もちろん」

洸平はそっと、優しく柊子の目立ち始めたお腹に触れる。

「はじめまして、だな。
…パパだよ。これからは、俺がキミを守るから。安心して元気でいるんだぞ」

パパ、という言葉が照れ臭そうに、それでも嬉しさを滲ませて、洸平が言った時。

「…あっ」
まるで洸平の声に反応したかのように、胎動を感じた。
洸平にもわかったようだ。目を丸くしている。

「…柊子。
俺、今めちゃくちゃ感動してる」

満面の笑みで目を輝かせる洸平に、柊子もうれしくて胸が震えた。


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