雨のリフレイン
それは、側で見ていた翔太にとっても。


妹とはこんなものかもしれない。実際には存在しないからわからないが。
とにかく、守ってあげたい。こちらを幸せにしてくれる輝く笑顔で、自分を見てほしい。柔らかくて、小さなその体をぎゅっと抱きしめて、ふわふわの髪を撫でたい。
恋人とは違う。性的なものじゃなく、もっと、愛おしい…


「それは、アレだな、ナナに対するものと同じだな」


光英大学附属横浜新医療センター内の部長室。
備え付けのソファに腰掛けて、書類片手に優雅にコーヒーを飲む一条拓人が、ズバッと翔太に告げた。
ちなみに、ナナとは翔太が飼っている犬の名前である。


「オマエね、さすがにペットと一緒にしないでくれ」
「ま、どちらにせよ、『柊子ちゃん』は水上先生のものなんだから。あんまり構うなよ」


生意気なイトコは、手にした書類を翔太に渡す。


「まずまずだな。さすがは、翔太。
あとは、もう少し人員の強化をしたいところだ。翔太と水上先生にかなりの負担をかけているからな。
特に水上先生は、これからお子さんも産まれるんだろ?」
「そうなんだよ。アイツ、産休が欲しいっていうからさぁ、柊子ちゃんにここで産んでもらうことにしたんだ。そしたら仕事の合間に会いに行けるだろ?」

それを聞いて、拓人は小さくため息をついた。

「休ませない気かよ。水上先生もかわいそうに。翔太、鬼だな」
「オマエほどじゃねーよ」
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