雨のリフレイン
「じゃあ、後は柊子ちゃんに任せるね。
オヤジ、早速、検査盛りだくさんですよ。
ちゃんと受けて下さいね。
さ、見舞いは、帰った、帰った」

翔太は慣れているようで、ヤクザの集団を手で追い払うような仕草をした。

「俺も老いたもんだなぁ。
ハナタレ翔太に身を任せなきゃならねぇ時がくるたぁ。
ま、しょうがねぇ。ハナタレも今じゃ立派に医者だもんな。
おい、テメェら、俺が居ねえ間、頼んだぜ」


「「「へぃ」」」


初めてみるヤクザ。
その威圧感に、柊子もたじろぐ。

「柊子ちゃん、ビックリした?
大丈夫。オヤジは、見た目は怖いけど女の子には優しいよ。よろしくね?」

翔太が柊子の肩をポンと叩き、見舞いのヤクザを連れて病室を出て行った。


「驚かせて済まないね、八坂さん。
あ、いや、お母さんと間違えないように、私も柊子さん、とお呼びしていいかね?」


他の患者と同じ検査着姿なのに、桜木からは大人の男の色気のようなものを感じる。

裏の世界に生きる男。

でも、ここでは、他の人と変わらない。
病気を患う、患者。

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