雨のリフレイン

諦めざるを得ない夢

水上にもうながされ、母は渋々と寝室に向かうことにしたようだ。

「じゃあ、柊子、後片付けをお願い。
水上先生、横になるから、診察を頼める?」
「もちろんですよ」

水上は、母を支えるようにして寝室に連れて行ってくれる。
母のことは水上に任せて柊子は夕食の後片付けを始めた。


このところ、母の具合は日に日に悪くなっている気がする。
柊子の中に不安が募る。


母の寝室から、水上が戻ってきた。


「先生、ありがとうございました。
いま、お茶を淹れますね」
「いや、いい。もう帰るから」

水上は、深刻な面持ちで柊子に歩み寄ってきた。

「いいか。
信子さんから目を離すな。
もし、異常があればすぐに呼べ。深夜だろうが早朝だろうが構わない」
「…!」


思っているより、悪い状態なのだろう。柊子は思わず水上の腕を掴んだ。


「そんな顔するな。
大丈夫だ。このまま、寝ていてくれれば落ち着くはずだ」


水上はポンポンと柊子の頭を撫でてくれる。


「今夜は星が綺麗な夜だ。
雨は降っていない。だから、泣くな。
その目を涙で曇らせることなく、母親のことを見ていろよ」


水上は柊子の耳元でそう呟いて、自分の部屋へと帰って行った。




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