雨のリフレイン

心の距離

久しぶりに、友達と楽しい時間を過ごせた。
店の前で二人と別れて柊子はマンションに向かって歩き出す。


雨はまだ降り続いていた。


家に帰っても、どうせ、一人。
暗く冷たい部屋に、一人。
おかえりを言ってくれる人もいない。
友達と過ごした時間が楽しかったから、尚更のこと、淋しい。


時間を確認しようと、スマホをカバンから取り出した。

30分ほど前に、一件の不在着信。
名前は、『水上洸平』。

柊子の酔いがいっぺんに冷めた。
水上からの電話なんて母の容体の事に違いない。
折り返し電話しようか。でも、仕事中なら電話を取ってもらえない。

「あ」

メッセージも、届いていた。慌ててアプリを開いて見る。


『シャンプーがなかった。そっちで風呂に入るから』


ーーなんだ。そんなこと。
よかった。お母さんのことじゃない。


ホッとしたら、何故か、ポロッと涙がこぼれた。


マンションに向かう道を行くのは、柊子一人。周りに人影はない。
聞こえるのは傘に弾かれる雨音だけ。


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