雨のリフレイン
柊子がシャワーを浴びて浴室から出てくると、水上がソファにもたれて起きあがっていた。

「すまない、うたた寝をしてしまったようだ」
「お疲れなんですね。
シャンプー、すみませんでした。明日、買っておきます」

ーーさっきのキス、気づいていない…よね。

柊子は恐る恐る水上の顔をうかがうが、いつもと特に変わったところはなく、ちょっとホッとする。

「酒、飲んできたのか?」
「あ、そうです!
お母さんのことが気になって、飲みに行くどころじゃなくなっていたんです。もう、一年以上かな。久しぶりに、同級生といっぱい話せました。楽しかったぁ」

ホッとしたところで、気持ちが緩んだせいか、再び酔いが回ってくる。
頭がほわんとして、フワフワしてきた。

「こんな時間が持てたのも、先生のおかげ。
ありがとうございます!」
「それは、よかった。
君はまだ若い。本来なら、のびのびしていていいんだ。もっと友達と遊んだり、恋愛したり、たくさん楽しい時間を過ごすといい」



「…水上先生と、楽しい時間は?」
「俺?」

柊子は、思い切ってソファに駆け寄り、水上の隣にちょこん、と座った。


「先生、お願い。
私を見て。


…好き」
「…っ!」

柊子は、水上の首に腕を回して抱きついた。
水上の温もりが愛おしい。伝わる鼓動に安堵する。
自分がどんな大胆なことをしているかは気づいていない。

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