雨のリフレイン
翌日。お昼休み。
ランチルームで柊子は仲の良い同級生達とお弁当を食べながら、母から聞いた名前を尋ねてみた。


「あー、三浦先生。知ってる」
愛美が大きくうなづいた。

「三浦香織。内科医ね。
名古屋にある三浦総合病院の一人娘よ。やたら化粧が濃いオンナ。とにかく偉そうなの」

愛美が苦虫を噛み潰したような顔をすると、一緒にランチをしていた他の同級生も、口々に同意の言葉を口にする。

「分かる!私、徹底して無視された」
「私なんて、一言、“邪魔”って。
そのくせ、若手の男の先生には、めっちゃ笑顔でさ」
「そうそう。今、一番のお気に入りは外科の水上先生だよね。
しょっちゅう周りをうろついてるし」

看護学生にはすこぶる評判が悪いようだ。

「柊子、気をつけなよ。
あのオンナが相手じゃ、何されるかわからないよ」

柊子は、苦笑いするしかできない。
とりあえず、母の作ってくれた、中身が同じお弁当を食べている時点で、噂の女医とは違うところにいる気がした。

「でもさ、柊子の気持ち分かる!
水上先生は、クールでカッコいいよねー」
「うんうん、仕事も真面目だし。
外科は翔太先生居なくなってガッカリだったけど」
「翔太先生みたいに笑顔振りまくわけじゃないんだけど、居るだけで、ホッとするっていうか。
信頼できる医師って感じだよね」

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