そばにはいれないから。



だけど、病室を除くとすやすやとベッドの上で眠る咲良が見えて、なんか安心したのか

すごい泣きそうになった。



「悪い、ちょっと………。」

これ以上進んで、咲良に近づいたら何かが崩れてそうで急いで病室から出て壁に背を当てた。



「………ふぅ…………はぁっ…………。」


目を閉じて、抑えようと深呼吸するけどどんどんまぶたの奥がじんわりと熱くなる。

でも、泣かねえ、


「誠也…………。」


結依が心配そうに戻って、病室のドアをゆっくりと閉める。



「悪いっ、大丈夫。」


さっき痙攣が起きた時、何もできなかった。


大丈夫だ。

絶対大丈夫。

俺が咲良にかけてあげないといけない言葉なのに。


あんなに苦しそうな咲良に大丈夫だからなんて、言わせて。



「…いちばん怖いのは、咲良なのにな。」


足の力が抜けて、座り込んだ。



俺は、無力だ。


何の力にも、なれない。



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