そばにはいれないから。



「…………緊張する。」

「はあ?何でだよ。」

あたしの車椅子を押してるのが誠也で、お母さんとお父さんはその後ろをついてきてる。


「だってさぁー、なんかさ。」

「大丈夫。誰もお前の事怒ってるやつなんか誰ひとりいねえよ。」


あんなひどい別れ方をしたんだ。

多少怒ってほしいくらい。



「えっとな、確か右なんだよ。」

自分の高校の応援席に向かうのに、不安そうな誠也。


「心配だなあ。」

まあ、あたしに言われたかないだろうけど。



「よいせっ。」

応援席に入るのに、ドアを開けるとプーンと漂うこの匂い。


「わ、懐かしい。」


懐かし過ぎるこの匂い。



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