鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「何だか懐かしい香り………これ、よくお母さんが塗ってくれた……今、思い出したよ」
「あぁ……これは尚美さんから教えてもらったものだからな。とてもよく効くんだ。きっと明日には痛みもなくなって、1週間後には傷も消えてるだろう。朝晩に塗ってくれ」
「くれるの?」
「あぁ。使ってくれ」
希海から受け取った少し緑がかった液体が入っている小瓶を受け取る。それはお母さんから希海、そして自分の元へとやってきた。空澄はこの薬を作ってみたいなと思った。上手くいくかはわからない。けれど、誰かの傷を癒せるのなら……そう思ったけれど、先ほどの少年が自分の魔法で体を吹き飛ばされた映像が頭をよぎる。
自分は怪我をさせたのに、本当に誰かを守ることが出来るのか。それがとても不安だった。
空澄の顔色が変わったのを感じ取っていたのか、希海はその後は何も言わずに、空澄の腕に包帯を巻いて、治療を終わらせた。道具を片付けた希海はまた空澄の隣に座った。
「じゃあ、話してくれるか?今日あった事を教えて欲しい」
希海は優しくそう問いかけてくれた。
けれど、空澄は口にするのも怖くなり、ただ俯いてしまう。そして、やっと言葉が出たと思うと、自分が不安になっている事ばかりだった。