鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「私、本当に魔女になれる?魔女になって迷惑かけないかな。力で誰かを傷つけない?………魔女は怖い存在なのかな………」
空澄は必死に希海にそう訴えた。自分の力が怖いと。自分でも情けない顔をしていたと思う。魔女になると決めたばかりなのに、こうやってすぐに悩んでしまう。それも彼に申し訳なかった。けれど、あの小学生の姿を思い出すと、体が震えてしまうのだ。
「間違った事をしないために、勉強して魔法を練習するんだ。それは、どんな仕事でも同じじゃないか?」
「………」
「人より力を持っているから疎まれ、嫌われる事もある。けれど、それでも空澄の両親は誇り高く、そして自信をもって魔女や魔王をやっていた。確かに空澄に魔女のしがらみから解放してやりたいと思っていたかもしれない。それぐらい苦労をする事も多いだろう。だけど、俺は空澄は立派な魔女になれると思ってた。空澄は魔女になるべきだって思ってたよ」
希海はとても得意気にそう言うと、ニッコリと空澄に笑いかけた。
だが、どうして彼がそんな自信をもって空澄に魔女を勧めのかがわからず、空澄は困ってしまう。
「………どうして?どうして、そこまで希海はすすめるの?」
「まぁ理由はいろいろある。空澄は生まれたときから魔力は高かったのもあるし、頭もよかった。けれど、1番の理由は泣き虫だから」
「え?」
「自分の事でも泣くけれど、他人の事でも泣ける。そして、大切な人を失う寂しさを誰よりも知ってるだろう。だから、人を助ける仕事、魔女の仕事にピッタリだと思ったんだ。確かに、俺たち魔女や魔王を嫌うものも多いし、偏見もまだある。………だけど、俺は何があってもおまえの味方だ。それは昔からずっと変わることはないよ」
「希海…………」
彼のまっすぐな気持ちがこもった言葉が、空澄の胸の中にすうっと入り込んだ。それだけで、下を向いていた心が少しずつ前を向いていく。
「それに璃真の謎も解明したいんだろ?それを、諦めるのか?」
「………諦めたくない、あきらめるなんてしたくないよ」
「そしたら、迷ってる暇なんてないはずだろうう………?さぁ、何があったか話してくれるか?」
無理強いする事もなく、強い言葉で怒る事もなく。優しい口調で促してくれる。
希海が居てくれるなら大丈夫。一人にはならない。傍に居てくれる人がいる。
心強い希海の言葉と優しい微笑みが、空澄の心から不安を少しずつ取り除いてくれるのだった。
そして、彼の存在が空澄の中でどんどん大きくなっていくのを感じていた。