鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「ねぇ……話しって何?」
「あぁ……実はそろそろ体に魔力を溜め込むのが寝ているだけで大丈夫になったんだ」
「え………あ、そうなんだ。よ、よかったね」
魔力は体を休める事で復活する。
今までは、鴉だった希海では魔力が足りなかったため空澄がキスをして分け与えていた。だが、空澄が魔力を譲渡し、そして希海が人間の体に慣れた事もあり、上手く溜める事が出来るようになったという事だった。
それは良い事のはずなのに、空澄は何故か悲しくなってしまっていた。焦り動揺してしまい、空澄は顔が赤くなった。
これでは、希海とキス出来ない事を残念がっているようにしか見えないと思ったのだ。
だが、実際は自分の気持ちはどうなのか?
そう考えると、あの時間がなくなる事が切なくて仕方がなかった。
希海とのキスは、空澄にとって特別な時間になっていたのだ。
それは何故なのか?
………そんな風に考えなくても、答えはもう出ていた。
空澄は希海が好きになっていた。
希海の顔が見れずに、真っ赤になっているであろう顔も夜の闇で彼には気づかれない事を願いながら、空澄はまた口を開いた。
「魔力が回復してよかったね。これで、本当に呪いの影響はなくなるんだね。あ、これはお祝いした方がいいかな?……希海は……え………」
自分の気持ちを隠すために言葉を紡ぎ続けていると、ふいに彼が空澄の頬に手の甲を当てて優しく撫でた。
それはまるでいつもキスをする時の合図のようで、空澄は思わず体に力が入ってしまう。
「空澄は、俺とキスしたい?」
希海のその言葉はとても甘く、空澄は体に熱を帯びていくのを感じ、潤んだ瞳で彼を見つめたまま固まるしか出来なかった。