鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
両親の店は、歩いていける距離にあった。けれど近い訳ではなく約40分ほどかかる場所だった。街から離れた山沿いの小さな町を2人で歩く。こんな住宅街に店があるのかと驚きながら、空澄は彼の隣を歩いた。
途中で彼が「手繋ぐ?」と聞いてくれたので、空澄は小さく頷くと希海は手を取って優しく包んでくれた。緊張してしまっていた気持ちが、別のドキドキに変わってしまう。
「こうやって学生デートみたいなのしてみたかったんだよな」
「………そうなの?」
「俺は呪われた身だったし、普通の人と交際しても迷惑だろうし、不気味がられるだろ?夜しか会えなくて、しかも昼間は鴉になってます、なんて言ったらみんな逃げるだろ」
「…………希海」
苦笑しながら話す希海、昔の話。
先祖代々の呪いのせいで自由に生きれなかった希海の事を思うと切なくなる。空澄が思っている以上に彼は辛いことを経験しているのだろう。これからは好きなことをして生きて欲しい。そんな風に思い、空澄は彼の手をギュッと強く握りしめた。
「着いたぞ。空澄の両親の家だ」
彼がそう言って目を向けた先。そこは、住宅街のひっそりとした袋小路の一番奥。小さな小さな古びた店があった。小さな出窓とドアがあり、看板はなかった。よく言えばおしゃれなアンティーク風の店構えだが、悪く言えば古家だった。
けれど、空澄はそこがとても温かい雰囲気があるように思えた。袋小路などなかなか人が来ない寂しい場所に見えたけれど、そこだけがほんのりと光ってみえたのだ。