鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
すると、北本は「見ていてくださいね」と言うと、何かを呟いたかと思った瞬間、手のひらから花が次々に出てきたのだ。
「すごい……魔法、ですよね?」
「そう。私も魔女に端くれなのよ」
そう言って笑うと、ジッと空澄を見つめた。そして、北本は優しく微笑んだ。
「私には、こうやって花を出すしか出来ないの。魔力もそんなにないから、薬を作っても効くようなものは作り出せなかったの」
「おばあさん………」
「あなたのお名前を聞いてなかったわね。教えてくださる?」
「花里空澄です」
「空澄さん………あなたは魔女になると決めた事、私はとても嬉しく思うわ。あなたの力を必要としている人は沢山いるはず。だから、自信をもって頑張ってくださいね」
「ありがとうございます」
北本の言葉は、空澄の心を大きく揺さぶった。必要としてくれている人がいる。そう言葉で言われるより、実際に必要とされているとわかると、感動は大きかった。
人に望まれる力がある。それは、責任も大きく、プレッシャーもあるかもしれない。けれど、だからこそやり遂げなければいけない。北本はそんな事を優しく教えてくれたような気がした。
カウンターに戻ると、希海が「よかったな」と、微笑みながら言ってくれる。
ここに連れてきてくれた希海、そして偶然に会えたお客さんに感謝をしながら、空澄は立派や魔女になる事を改めて決意したのだった。