鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
瞳に涙が浮かびそうになる。
けれど、それをグッと我慢して璃真まであと数歩の所まで来た時だった。
彼から魔力を感じたのだ。
それもとても膨大で、禍々しい魔力。
そして、彼の瞳も赤く光っているのに、その時やっと気づくことが出来たのだ。
「………っっ!!」
「おっと………危ないな、空澄は。突然魔法を使うなんて危ないじゃないか」
空澄は咄嗟に風魔法を発動し、璃真らしき男に向かって放った。
が、その前にその男は割れたガラスの窓から外に出てしまっていた。
空澄は咄嗟に追いかけるが、璃真の姿をした男は庭に立ったままどこにも行こうとはせずに、空澄を見つめていた。
「あなたは璃真じゃない。………璃真はそんな妖しい瞳も魔力も持ってないもの」
空澄は恐怖を感じていたが、相手にその気持ちがバレないように強気の言葉を発した。
けれど、体は小刻みに震えていた。手を強く握り「大丈夫大丈夫」と言い聞かせていたが、少し前の記憶が空澄に恐怖を与えていたのだ。
目の前の璃真の瞳の赤。
それは、空澄を襲った相手。小学生の少年と全く同じ色だったのだ。怪しく光る瞳。そして、ニヤリとした口元も似ている。
空澄はキッと璃真を睨み付ける。
いや、璃真の姿をしている相手を。
すると、相手はまた「ハハハッ」と甲高い声を上げて笑った。が、その後、すぐに変化が訪れた。
目の前にいたはずの璃真の体が一瞬にして骸骨の姿になり、そして崩れてガタガタと地面に落ちたのだ。
そこにあるのは、白骨。
ハッとして、和室の部屋の仏壇を見る。そこには割られた骨壺が落ちていたのだ。
「この姿で会うのは初めてだな」
「…………あなたは誰?」
璃真の白骨の隣に立っていたのは、赤みがかった短い髪、そして真っ赤な瞳の男だった。少し若く見える容姿だが、ニヤニヤと笑う姿は何とも不気味だった。服装は今時の若い人と変わらない、ジーパンにTシャツだったが、至る所にシルバーのアクセサリーがジャラジャラと飾られていた。
「緑川リアム。おまえの伴侶となる相手だ」
突然の宣言に、空澄は驚き、ただリアムの事を唖然と口を広げて見つめるしかできなかった。