鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
★★★
「今日はご足労ありがとうございました。黒鍵さん」
空澄がリアムに襲われている頃。
希海は、また小檜山の目の前に座っていた。だが、前の部屋とは違った。
窓には牢屋のように鉄の棒が並んでおり、真ん中に古びたテーブルと椅子が置いてあるだけの薄暗い場所だった。
そこは、取調室だった。
「何で俺がこんな所に呼ばれないといけないんだよ」
「緑川リアムを襲撃したのはあなたですね?」
小檜山の言葉は唐突だった。
が、希海にはその名前を知らなかったので、素直に返事を返した。
「は?誰だよ、そいつ……」
「あなたが使い魔だった頃、花里さんの幼馴染みである新堂さんの白骨遺体が公園で見つかった日の夜。あそこでは、魔王同士が戦闘をしていたという情報があります。それが、緑川リアム。そして………その相手が黒鍵さん。あなただと情報が上がっています。リアムは真っ黒な鴉と戦って、倒された………と」
「あぁ……あいつか。確かにあいつとは戦ったが、それには理由があって………」
希海はため息をつきながら、その経緯を伝えようとした。
が、小檜山はいつものように冷たい声で、希海の言葉を遮った。
そして、視線も凍るように鋭かった。
「理由があったら人を殺してもいいのですか?」
「は?殺すって……あいつは死んでなんかいないだろ、俺は……」
「黒鍵希海さん。あなたを殺人罪で逮捕致します。」
「…………なっ!!」
告げられた罪状に、希海は思わず立ち上がり大きな声を出した。
が、そんなものでは事態は好転しないようだ。
小檜山の表情はいつものように無表情だったが、希海には楽しそうにほそく笑んでいるように見えた。