鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
そして、気づくとこの場所にいた。
先ほどの手錠は外されていたが、変わりに銀色の手錠が両手首につけられていた。
その場所は、きっと牢屋だろう。
先ほど何度と魔法を使おうとしたが、発動しなかったので取調室と同じで、この場所は魔法が使えないようだった。
出入り口はとても大きく重厚なドアがあり、しっかりと鍵がかかっており、とてもじゃないが開きそうになかった。
そして、希海は先ほどから体が気だるく感じてしまい、布団に横になっていた。原因はわかっている。腕に、何かで刺されたような小さな傷跡。これは注射の痕だ。
魔女や魔王は、寝ることで魔力を回復する。先ほど、気を失っていた希海は少しだが魔力を回復していたのだ。そうなると、希海は奪われた魔力はどんどん回復していくのだ。
だからこそ、血液を抜いた。体液には魔力が宿るのだから、とってしまうが1番簡単なのだ。
「くそ………やられた………」
希海は弱々しくそう呟いて、鉄格子の窓から外を見つめた。まだ外は明るい。希海が倒れていた時間はそこまで長くないはずだった。
だが、心配なのは空澄だった。
小檜山という男は「花里」の言葉をよく出していた。きっとあの男は空澄が目的なのだろう。だから、邪魔な希海を空澄の傍から離した。
希海はそう考え付いたのだ。
「………もう少しだけ………空澄、無事でいてくれよ」
そう呟きながら、希海はまた目を閉じた。
まずは魔力を回復させることが最優先なのだ。早く魔力が戻る事を願い、希海は力が入らない体を布団に沈めて、ぐっすりと眠りについた。