鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする



 だが、物事はそんなに上手く運ばないものだった。
 花里空澄という純血の魔女のひく女の周りには、使い魔の鴉がいた。使い魔だが、呪いによって鴉にされた純血の魔王だった。そのため、リアムよりも魔力も魔法も強く、空澄に近づくことが出来なかったのだ。

 それに、幼馴染みの新堂璃真という男もやっかいだった。魔力を持たない一般人だというのに、妙に勘が鋭いようで、監視をしているといつもリアムの方をちらりと気にして視線を送ってきていた。


 そんな時に、絶好のチャンスが訪れたのだ。
 璃真が事故に遭ったのだ。不運な事故だった。だが、その男に同情する事などなかった。これは、璃真を使って空澄に近づけるのだ。

 リアムの得意魔法は「憑依」。人体や動物など生き物に入り込み、言葉通り操れるのだ。もちろん、様々な人間に憑依をして空澄へと近づいていた。だが、全て鴉や幼馴染みにばれてしまい、失敗していのだ。
 だが、幼馴染みの体に入ってしまえば、鴉も容易には近づけない。空澄と璃真は仲がいい幼馴染みで共に暮らしているほどだった。それに、恋人にもなりやすいだろう。

 道路に倒れ血を流している璃真を見て、リアムはニヤリと微笑んでしまう。

 ゆっくりと近づき、璃真の傍にしゃがんだ。
 虫の息なのか、浅い呼吸とヒューヒューという乾いた息が出ている男は、朦朧とした瞳で、リアムを見た。



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