鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「………おま……えが、……いつも見てた奴か………」
「あぁ………おまえの体を貰う。安心しろ、璃真として生きてやる」
そう言うと、リアムは璃真の体に触れて、小さな声で呪文を唱え始めた。
すると、横たわる男は弱々しく口元を緩めた。何故この状況で笑えるのだ?と、怪訝な視線で璃真を見つめる。
「……空澄………が独りぼっちじゃ………なくなる………。あいつは泣き虫だから………」
そう言って目を閉じた。
監視をしていてわかってはいた。この男は純血の魔女に好意を持っていたのだ。だからこそ、空澄を一人きりにしたくなかったのだろう。
ならば、俺がこの体を使うことは調度いいことだろう。そんな風に思った。
呪文を唱え終え、死にそうになっている璃真の体に憑依をする。
が、その時だった。
最後の力で、璃真が何かを呟いた。
その瞬間、リアムの体は縄で締め付けられたように動かなくなった。
『なっ!!何だこれ…………』
「………うまく、いったかな」
先ほどまで死にそうになっていた男、璃真が血まみれになりながら立ち上がった。
だが、おかしいのだ。確かにリアムは璃真の体に入っているが、全く体が動かない。だが、確かに男の体は動いている。
『これはどういう事だ!?』
その声は外にはもれていない。璃真の体の中だけで響いていた。それに、この男には聞こえているようだった。
「僕が魔法をかけたんだよ。君を封じる僕の体の中に封じる魔法をね」
『なっ………おまえ、魔王じゃないはずじゃ………』
「そう、魔王じゃない。いや………純粋な魔王ではない、かな?」
『作り物の魔王…………か!!』
「そう。空澄の両親が遺したものでこっそり勉強したんだ。あの鴉も手伝ってくれたけどね」
『………早く俺を解放しろ!』
「だって、君が出ていったら僕は死んでしまうだろ?まぁ、あと10年だけだから。そしたら、おまえはあいつと結婚すればいいさ。まぁ、出来ればだけどね」
『じゅ………10年だとっっ』
そうやって、リアムは璃真の体に閉じ込められていたのだった。