鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「それでもし襲われたりしたら、割ればその魔力を吸収して魔法を使えるようにしておく。だから、呪文は覚えておけ」
「暗記は得意分野だ」
「………自分が死ぬのを普通みたいに言うなよ。おまえが死んだら寂しいだろ」
「……………ごめん、希海」
璃真の返事を聞いて満足したのか、彼は膨れっ面のままソファに戻り、横になって目を瞑った。ふて寝をしまったようだ。
だが、最後の言葉は実に希海らしかった。
そっけない雰囲気を持ちながらも、男相手に「寂しい」と自分の気持ちを言える。それはなかなか出来ないことだ。
だからこそ、希海は空澄に似ていると思ったし、恋人になるのだなと思った。
悔しくないわけはない。
空澄を置いて死にたくないし、他の男にも取られたくない。
けれど、恋人になって本当に死んだら、彼女はどんなに悲しむだろうか。今のままよりも孤独を感じるはずだと思った。
それに、振られるのが怖い。そんな弱い自分もいた。
きっと彼なら告白してしまうのだろう。
そう思い、希海は苦笑した。
やはり、希海には敵わない。生き続けられたとしても………
「鴉の呪いがとけても、空澄には言わないでくれよ。もちろん、俺がもし死んだ後も」
「……それは約束出来ないから、ちゃんと見とけ」
目を瞑ったまま冷たく答える希海を見て、璃真はまた笑ってしまったのだった。