鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「………きっとリアムって男は空澄に近づこうとするから気を付けてね」
「安心しろ、おまえの意識がなくなったら、俺が魔法でぶっぱなすから」
「………なるほど、だから最後は家じゃなくて、公園に案内されたんだね」
真夜中の時間。
沼のある公園には人の姿はなかった。いるのは、希海と璃真のみだ。
10年長く過ごせた。それはある意味ではよかったのかもしれない。けれど、璃真はどうだったのだろうか?自分のためではなく、愛しい空澄のために尽くした10年。それなのに、2人は結ばれることはないのだ。最後の10年を恋人になって過ごそうとはしなかった。それもすべて空澄のためなのだろう。恋人になっても、希海はいなくなる。寂しがる恋人を残して死んでしまう事を考えれば、結ばれない運命を選んでしまうのもわかっていた。
「希海………空澄を頼んだよ」
「あぁ」
「僕に遠慮して恋人にならないとかは止めてよ。希海と空澄には幸せになってほしいと思うんだ。それに、希海は空澄が好きだろう?」
「………俺は鴉だぞ」
「好きなのは否定しないんだね」
全て知っていて聞いてくる璃真はずるいと思っていた。璃真が内心ではどう思っているかなど、希海にはわからない。けれど、大切な相手を自分に託してくる。それは、きっと彼が希海を信頼してくれているからだとはわかった。
感情がくじゃくじゃで、彼の問いかけに何と答えるのが正解なのかわからなくなっていた。
「ごめん……意地悪な事を言った。でも、僕はもう空澄を守れない……だから、守ってあげて。それを頼んでいいだろ?」
「あぁ……元からそのつもりだ」
「それを聞いて安心したよ。………あぁ、何だか眠くなってきた。そろそろかな……」
「おいっ!!まだ、話せるだろ、空澄にだって本当に会わなくていいのかよ」
「魔女の話をしていないんだ。話せないだろう?それは前から決めた事………」