鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする



 突然言葉が切れると、璃真は目を瞑った。
 終わりの時が近づいているのだとわかり、希海はギュッと手を握りしめた。


 「………最後にこんな事を言うと怒られるかも知れないけど………僕も魔王として生まれたかったな。」
 「……璃真」
 「安心して。君の呪いはもうすぐなくなるよ。そして、君たちは結ばれる。これは僕の最後の勘だ。幸せになって…………」


 そう言った後、ニッコリと笑った顔は、別れとは思えないほどに、清々しく、そしてとびきりの笑顔だった。
 希海はこみ上げてくるものがあったけれど、別れに浸っている暇はなかった。
 手の甲で、こぼれそうな涙を荒く拭いながら最後の彼の姿を見つめた。

 けれど、彼は変わらない。変わるのは中身だけだ。

 ガクンッと体が揺れ、璃真は倒れた。
 けれど、希海は彼に近づく事はない。
 
 そう、もう目の前にいるのは璃真であって、璃真ではない。体は璃真に見えるが、それも中にいる魔王が見せている幻想だ。



 「………あぁーーー!!やっとか………長かったぁー」
 「…………」


 璃真とは思えない言動。
 彼はゆっくりと立ち上がり、体を伸ばした。
 そして、キョロキョロと周りを見たり、自分の全身を眺めたりした後にニヤリと笑った。
 璃真の体だというのに、先ほどと違うところが1つだけ事に希海は気づいた。
 彼の瞳が真っ赤なものに変わっていたのだ。


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