鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする



 「…………おまえ、リアムとかいう魔王か?」
 「あぁ………。おまえは鴉だな。10年間見てたから覚えたよ」
 「じゃあ、話は早い。空澄を渡すわけにはいかないんだ。それに、その体は返してもらう」
 「なんだよ………やっと動けるようになって、悲願も果たせるかもしれないのに、それはないだろ?空澄に挨拶に行きたいんだけど?それに、今俺が離れたらこの男の体は白骨に戻るだけだよ?」
 「………おまえにはある意味感謝してるよ。璃真との時間が増えたんだからな」
 「だったら………」
 「けど、その体を使っていいのは、璃真だけなんだよっっ!!」


 話しは終わりだ、という言葉の代わりに希海は勢いよく炎魔法を彼に向かって勢いよく放った。
 が、リアムもそれをよんでいたのか、ひらりと跳んで魔法をかわした。


 「おまえの属性も火なんだろ?だったら、俺と力勝負でもしようぜ。まぁ、鴉の体のままでは魔力では勝負にもならないけどな!」

 そう言ってリアムは希海よりも数倍の威力がある炎を向けた。リアムの属性も火なのだ。それに対抗出来るはずもないと判断した希海はすぐにその炎から逃げた。

 夜だけ人間の姿に戻れる希海だったが、魔力は鴉の時と同じままなのだ。それをリアムは璃真の体の中で見ていたのだろう。

 だが、それでも希海は勝算があった。
 希海はニヤリと笑って、リアムの意表をつく行動に出た。
 残りの魔力を使って、最大級の炎魔法を放ったのだ。向かった先は、リアムではない。沼へだ。

 「はははっ!何やってんだ?血迷ったか?」
 「………余裕なのも今のうちだ」
 「………なんだと?………なっ………これは霧……いや、湯気か?」



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