鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
沼の水に炎ぶつける事で、水は一気に沸騰し水蒸気となって沼の周囲を覆った。それにより一気に視界が悪くなる。
「視界を遮ったか………だが、それならおまえだって見えないはず………っっ!!」
だが、希海には見えていた。
霧の中をリアムの目を欺くように素早く飛んだ。そう、鴉の姿で。人間よりはるかに視力が良い鴉の目でリアムを捉え、彼の体に近づいた瞬間に人間に戻りそのまま体を掴み、勢いよく地面に叩きつけたのだ。
「ぐっっ!!」
体に衝撃が走り、リアムは苦痛の声を上げて、表情を歪めた。
だが、希海は油断はしない。服から取り出したガラス玉を見せつけながら彼の体の上に体重をかけて地面に押し付けた。
「これは、花里家のものの魔力が入っている。これを使えば俺の魔力はあっという間に高くなって、璃真の体ごと焼き尽くす事が出来る。もちろん、リアム。おまえも一緒にな」
「………はったりを。純血の魔力をガラスに留めるなど、純血のやつらがするわけないだろ?」
「じゃあ、やってみるか?俺はそれでもいいが」
希海はニヤニヤと笑いながらリアムを見下ろした。
そんな様子を見て、リアムは少し考えた後に渋々声を上げた。
希海の考えている事を理解したようだ。
「………条件は?」
「話が早くて助かる。おまえを見逃す。だから、璃真の体から出ていけ」
「………………」
「命とこいつの体だったら選ぶのは1つだろ」
「…………ちっ………俺が何のために10年、こんなところに居たと思ってんだよ?」
ため息混じりにそう言うと、リアムは希海の腕に手を伸ばし、払い飛ばした後に体を起こして、希海を睨み付けた。
「純血の女は俺のものだ。おまえには渡さない」
そう言うと、璃真の体から真っ赤な髪と瞳の童顔の男が出てきた。その瞬間、地面にガラガラと白骨が落ちた。