鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
31話「黒幕」
31話「黒幕」
「おい!おまえ、何やってんだよ!」
せっかく捕まえた空澄を横取りされたリアムは大きな声をあげて、空澄の傍までやっていた。
「こいつは俺の獲物だろ?おまえが鴉を捕まえている間に、純血の女は俺が捕まえる。そう約束したはずだ」
「…………え、どういう事!?希海が捕まったって………それにあなた達は仲間なの?」
空澄は驚いて2人を交互に見つめると、小檜山がにっこりと笑った。
「黒鍵さんは殺人罪で逮捕されました」
「なっ!!希海はそんな事してない!何を言ってっ」
「そして、そこのリアムとも交渉はしました。花里の女を捕まえろと。けれど…………あなたに渡すとは一言も言っておりませんが?」
「なんだとっ!?」
「あなたは用なしです」
そう言うと、どこからともなく軍服の男達が飛び出し、一斉にリアムの元へ向かい、それぞれの得意魔法で彼を攻撃した。
驚きながらもリアムは迎撃するが、それでも人数が多すぎるのだろう。どんどんと押されている。
状況が変わりすぎて何が起こったのかわからず、空澄はその様子を唖然としまま見守った。
「逃げなくていいのですか?純血の魔女さん」
「………小檜山さん………」
耳元で囁く声が聞こえる。
それはさきほどまで離れたところに居たはずの彼だった。いつの間にか、空澄のすぐ隣に立っていた。その表情はとてもニコやかで、今までの無表情が嘘のようだった。