鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
大きな声を上げて反論した時だった。
ドザッという大きな音が辺りに響いた。
「………くっ………いって………」
空澄が動けないまま目だけを下に向ける。
すると、透明な氷の下で、赤い髪の男が軍服の男に捕らえられているのがわかった。
どこか怪我をしたのだろうか。苦痛の声が聞こえてくる。
「リアム…………」
「あの男も逮捕されます。魔法により死体の隠蔽をしていたのですから」
「そんな!!………でも、あの人がいなかったら私は璃真と………」
「10年も過ごせなかった?だから、彼を許すのですか?」
「あなた、知っていたのに何も止めなかったのね?」
「………それが必要だと思いましたから」
小檜山は暴れながらもパトカーに乗せられていくリアムを見つめながらそう言った。その横顔はとても楽しそうで、今のも笑い声をもらしそうなほどだった。
「………私はあなたと夫婦になるつもりも、魔力を使うつもりもないわ。これは私の魔力。私のために使う!あなたにはあげない」
「………新米の魔女のくせに、何を言ってる?」
「くっっ!!」
手首の氷が増殖し、手や腕が、次々に氷に覆われ始めたのだ。
あまりの冷たさ、そして固さに空澄は顔を歪めて悲鳴を上げた。体を起こしているのも難しくなり氷の地面に体が着いてしまう。
「あなたのような力を使いこなせない下等な魔女はそうやって寝ているのがお似合いです。何、あなたの魔力は私が使った方が人々のためになりますよ。この力があれば私が世界で1番の魔女になれる。魔力の高い純血と特殊な純血が混ざり合えばどんな魔王になれるか!!」
「…………特殊な純血?………小檜山さんも純血……………」
空澄がそう言うと、小檜山は嬉しそうに微笑み「そうですよ」と返事をした。