鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「…………私の魔力使ってくれる?」
「え………」
「小檜山さんの狙いは私………でも、私では魔法が使いこなせなかった。悔しいけど………彼は倒せなかった。………もっともっと強くなるって約束するから……だから………っっ」
「……………」
悔しい気持ちを吐き出した。
彼に頼ってばかりで情けなくて志方がなかった。
けれど、「大丈夫だ」と、言わんばかりに彼は空澄の口を塞いだ。いつものように、食べられるような深い深いキス。
自分の魔力が彼に渡っていく。それを感じて涙が出てしまう。
少しだけ、唇が離れると「俺がお前を守るんだって、前から言ってるだろ」と耳元で囁いた瞬間、ボオォーッッという炎が現れる。
それを彼の手から出ている。
「っっ!!遅かったですか…………!」
「小檜山………おまえにはこいつは渡さない。空澄はそれを、望んでないんだ。おまえが何度やってきても、俺はおまえを追い出すさ」
そう言うと、小檜山の体の周りを炎で包む。小檜山も必死に魔法で抵抗するが、純血の魔力を与えられた希海に敵うわけはないのだ。
どんどんと炎の勢いが増していき、小檜山の服の裾が燃え始める。
小檜山は悔しそうな表情をして、空澄の方を見つめた。すると、突然小檜山が大きな氷柱のようなもうを作り上げ、勢いよく空澄の方へと飛ばした。
「空澄っっ!!」
希海は、すぐに氷柱の方へと意識を変え、魔法を使ってその氷を溶かした。ガラスの魔法でも防げなかったそれは、きっと小檜山が残りの魔力を使い放ったもののようだった。
「っっ!!」
「おい、待てっっ!」
希海が視線をそらした隙に、小檜山は火傷をした体のまま空をあっという間に飛んでいってしまった。希海は彼を追いかけようとしたが、希海も体が限界だったのだろう。よろけて、地面に足をついてしまった。
「希海、大丈夫?!」
「あぁ………悪いな、遅くなって………」
「そんな事ないよ。私一人だったら何も出来なかったの………希海が来てくれてよかった。ありがとう、助けてくれて」
「そのガラス………璃真が助けてくれたんだな」
もう光を発していない璃真からもらったガラスのネックレス。空澄は、それを手に取るとほんのり暖かさを感じられた。
「うん………きっとそうだよね………璃真にはずっと守ってられてばかりだな」
「あいつはそれが嬉しいんだよ。………そういう奴だ」
ボロボロになりがらも、ガラスを見て微笑む希海はとても嬉しそうで、空澄は笑みがこぼれた。
空澄が魔女になって始めての事件。
それが、ようやく終わろうとしていたのだった。