鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
空澄はトレンチコートを着て、厚手のマフラーを首に巻き、スマホと鍵だけ持って家を飛び出した。
随分寝てしまっていたようで、空はうっすらと明るくなっていた。春になったばかりの朝は寒い。空澄はポケットに手をつっこみながら近くの公園まで走った。
公園には脇道があり、そこから降ると大きな沼がある。そこは大きな魚もいるようで、釣りをしている人も多い。冬場には白鳥が来るぐらいに大きな沼だ。けれど、朝早いとあって今は誰もいない。薄暗い中を空澄は沼へと向かった。すると、「keep out」と書かれたテープ、規制線が貼られている場所があった。きっと、その周囲で璃真が見つかったのだろう。
空澄はキョロキョロと辺りを見渡し、誰もいない事を確認すると、そのテープをこっそりとくぐった。
「…………璃真……ここで何があったのかな………どうして、こんなところに来たの?」
そこは何もない木々が生い茂っている場所だ。璃真は何をしたかったのか。どうして死んでしまったのか。いなくなってしまったのか。
そう思うだけで、また鼻がツンとしてくる。