鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「お願いっ………誰かっ………誰かー!!助けてっ!!っっ、ゴホゴホッ………」
力を振り絞って大きな声を出した時だった。泥水が口の中に入り、空澄はむせてしまう。それと同時に体に力が入らずそのまま沼底へと体が沈んでいく。
(もうダメだ………誰か………璃真………)
最後に璃真の名前を読んだときだった。頭の中に最後に彼と話した時の記憶が蘇ってきた。
『もし何かあったら、空澄のお母さんの呪文を唱えて』
お母さんから何度も伝えられていた呪文。
何か危険なこと、自分では解決出来なくなった時、死んでしまいそうな時、いざと言う時のため使うのだと教えて貰っていた。
『その呪文はあなたをきっと助けてくれる。だけど、辛い経験もするかもしれない。だから、使わない方がいいのだけれど………』そう迷いながら教えてくれたのだ。
その呪文を使ってもいいのだろうか?そう迷ったのは一瞬だった。
迷っている暇などない。今、ここで命を落としてしまえば、その呪文の意味もなくなってしまうのだから。