鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
空澄は最後の力を振り絞って顔を水面から付き出した。思いきり息を吸い込み、最後のチャンスを呪文を唱える事に決めた。
間違えてしまってはダメだな。焦りながらも、空澄は繰り返し頭で覚えつつけてきた言葉を初めて口にした。
『‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐』
何の意味かもわからない言葉の羅列。
けれど、声に出すと何故か不思議もしっくりした。そして、その呪文を口にした瞬間、自分の声とは思えないほど頭に響き渡り、それがとても遠くまで届くイメージを感じた。そして、その言葉が輝いているように感じられたのだ。
不思議な感覚を覚えながら呪文を最後まで言い終えると、突如白い光が空澄の体から発せられ、それは薄暗かった空に向かって高く高く舞い上がった。そして、何かに向かっていく光がどこかの地上に落ちた時に、そこから真っ黒な羽が沢山が舞い降りてきたのだ。
その光が落ちたのだすぐ近くの公園の木々の間だとわかり、空澄はそちらを見つめたけれど、もう力が残ってはおらず、そのまま沼の中に全身が沈んでいった。
すると、刹那。沼の上に突風が走った。それを空澄が感じる事はなかった。その風は沼の中にまで及んだ。まるで、空澄を包むように風が発生したのだ。
空澄は溺れてしまいそうになっていたが、突然ゆっくりと体が浮いてくるのがわかり、驚きながらも、何度も咳き込んだ。突風は、空澄の周りをぐるぐると周り、球体のような形をつくるように風が吹いていた。