鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「な、何これ………」
やっと呼吸が整ってきた空澄は、辺りをキョロキョロと見回す。風に触れてみるが、そこにただの風の通り道になっているだけであり、くすぐったい感覚を感じるだけだった。けれど、この風が自分を支えていると思うと不思議な力だと思い、こんな事を出来るのはこの世界であの存在だけだと思った。
「………もしかして、魔女の力?」
「それはおまえの力だ」
空澄の後から声が聞こえた。
ハッとし、後ろを振り向こうとしたけれど、その前の体を抱き抱えられるのを感じた。気づくと、脚と腰を支えられ、所謂お姫様抱っこという状態だった。
そして、空澄はその人の顔を見上げると、そこには夜があった。
真っ黒な髪に、黒いコート。黒の上下の服を着込んだ男が目の前にいた。瞳は、深海のように青くそして暗かった。けれど、キラキラと朝日が射し込む瞳は不思議と輝きな持っており、空澄は思わずそれを見つめてしまう。綺麗だなと思った。
すると、その男はニヤリと笑った。切れ長の瞳に長い睫毛、そして真っ直ぐに伸びた眉毛と高い鼻。口角が程よく上がった唇。整い過ぎているその男はまるで映画に出てくる俳優のようだった。がっしりとした体は、大きすぎず、しなやかにも見える。