鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
思わず見惚れてしまっていた空澄を、その男は「何だ?初めて魔力使って疲れたか?」と、今度は心配そうに空澄の顔を覗き込んだ。
綺麗な顔が間近に迫ってきたので、思わずドキッとしてしまったが、彼の言葉の意味を再度考えハッとした。この男は魔力を使ったのがまるで、空澄自身だと言いたげだった。
「………私が魔力を使った?何言ってるの?私は魔女じゃ………というか、あなたは誰?あなたが、魔王なんじゃ………」
「質問が多いな………だけど、ここで悠長に話している時間はなさそうだな」
いつの間にか風の球体は失くなっており、空澄の体が浮いているのは彼が何か魔力を使っているからのようだった。
どうして、知らない相手、しかも魔王に抱きかかえられているのか不思議な状況だったけれど、彼から離れてしまったらまた沼に落ちてしまう。だから、仕方がなく彼の体にしがみついているのだ。そう思うようにした。
それに、彼は魔王と言われても怖いと思わないから不思議だった。
青黒い瞳をキッと睨み付けて彼はどこかを見ていた。けれど、それがまだ暗い西の空から、何か光っているものがこちらに向かって飛んできているのがわかった。飛行機やヘリコプターなどかと思ったけれど、それよりも大分小さく、そして早く見えた。