鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
クイズを出しているかのように空澄の質問に答えるけれど、正解は教えてくれない。目の前の彼は、空澄自ら気づいて欲しいように感じられた。
それにしても、彼は自分が生まれる前から知っているのというのに驚いた。ならば、彼の事を知っているはずだが、空澄には名前の聞き覚えも、顔の見覚えも全くなかった。けど、この妙に安心する雰囲気を感じる理由がわかったような気がした。
どんなに記憶を思い返しても目の前の彼の事を思い出すことは出来なかった。そのため、まじまじと彼の顔を見つめた。希海はそれをまたニコニコと見つめている。それが少し恥ずかしくなりながらも、ジーっと彼の顔を見つめ続けた。けれど、こんなにも容姿の整った顔を1度見て忘れる事などあるだろうかと、疑問にも思った。
「…………わ、わからないです」
「まぁ、そうだよな。じゃあ、この瞳を見てもわからないか?」
そう言って、希海はグイッと更に空澄に顔を近づけた。彼の鼻と自分の鼻とか触れそうになり、思わず体がビクッと反応してしまう。けれど、冷静な彼を見ていると、こちらがドキドキしているのが恥ずかしいため何とか平然を装おって彼の顔を見返した。
すると、彼の瞳が目に入る。真っ黒でだけどどこか青い深海に似た濃紺と漆黒のグラデーションがとても美しかった。そして、その瞳に見覚えがある事に気づいた。それは確かに毎日会っていた。いつも綺麗だなと見つめていた小さな小さな瞳。