鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする



 視界が暗くなり、次に感じたのは唇にぬるりとした冷たい感覚だった。
 希海にキスをされている。

 それがわかり、空澄は目を大きくした。そして、彼の胸を強く押そうとするが何故か力が出ない。その間も、彼は空澄の口を食べるように口を開いてキスを繰り返してくる。空澄はただそのキスに翻弄され身をまかせるしかなかった。
 久しぶりに感じる唇を合わせる感触。それは、とても甘くて全身が気持ちのよい痺れを感じさせていた。それと同時に体の力が抜けていく。これは彼に骨抜きにされているのか、魔力を吸われているからなのか、空澄にはわからなかった。
 とろんとした瞳のまま、時折見える彼の深海の瞳がギラギラと輝いているのを見つめた。綺麗だなとこんな無理矢理のキスをされているのに思ってしまう。



 息苦しさを感じ始めた頃、希海はようやく空澄から唇を離した。
 唾液で濡れた唇を舌でペロリと舐め、そして「ご馳走さま」と、微笑んだ。そんな希海の表情は、先ほどの真っ青の表情が嘘のように、明るくなっており、肌もツヤツヤだった。

 全身の力が抜けてしまった空澄はソファに沈みながらボーッとしながら元気な希海を見つめた。


 「………何で、急にキスなんてするの?希海のバカ………」
 「空澄がいくらでも使ってっていうからだろ」
 「だからキスっておかしいでしょ?」


 本当は怒りたいのに、そんな力も出ないまま無力感を出したまま話を続ける。きっと、彼は自分が怒っているとは全く思ってないだろうな、と空澄は感じていた。



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