鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「魔力を貰うためには、体液を貰うんだ。唾液とか血液、汗とか………まぁ、エッチな体液とか?」
「…………希海ってエッチだったんだね」
「違うだろ!だから、魔力を貰うためにキスしたんだ。おかげで元気にはなったけど………今度は空澄がヘトヘトか。そんなに沢山貰ってないんだけどな」
「……………」
「少し返すか?」
唇を指さして、ニヤニヤした笑みを浮かべながらそう言う希海に「けっこうです!」と、返事をしてそっぽを向いた。そんな様子を見て、クスクスと笑う彼の声が聞こえたが空澄は無視をして目を閉じた。
鴉の時はずっと一緒にいたとはいえ、人間の姿になって初めて会ったのに、キスをしてしまうなんて、恥ずかしすぎて彼の顔を見る事が出来なかった。キスしなければいけない場面だったとしても、大胆な事をしてしまったなと、空澄は顔が赤くなるのを感じた。
「じゃあ、しばらくここで休んでろ。いろいろあって疲れただろうし」
「あ…………」
そう言うと、希海はリビングにあった大判のブランケットをソファで横になる空澄の体に掛けてくれた。
そして、希海の頭を撫でる。時折彼の手が額に当たり、それがとても温かくて気持ちよかった。
「子ども扱いしてるでしょ?」
止めて欲しくないのに、ついそんな事を言ってしまう。けれど、その気持ちは彼にはお見通しのようで、希海は「そんな事ない」と笑いながら言い、その手を避けてくれる事はなかった。
すぐに瞼は重くなり、彼の体温を感じて空澄はまた眠りについた。「おやすみ、空澄」という、優しい声を聞こえた。
これで怖い夢は見ない。そんな風に空澄は思った。