鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする



   ★★★



 空澄から小さな寝息が聞こえてきた。
 起きている時は常に緊張していたようだったが、寝顔はとても安らかだった。
 そんな彼女の無邪気な子どもらしい寝顔は昔から変わることがないなと、希海は思った。髪を撫で、そのまま柔らかな頬に触れれば、気持ち良さそうに手に顔を押しててくる。猫のような仕種に思わず微笑んでしまう。


 
 そんな穏やかな時間はすぐに終わりを迎える。


 「無粋な奴は何処の誰だ………」


 ため息と共にそう呟き、希海は重たい腰を上げた。
 外からカツンカツンッと足音が聞こえる。今は朝方で、やっと出勤の人並みも落ち着いた頃だがこの足音がけがやけに響いて聞こえた。
 魔力を持った者だと、希海はすぐにわかり早足で玄関に向かった。

 空澄の両親が亡くなった後、この家を守るために使い魔である希海が結界をはって守っていた。魔女の素質がある空澄がいつ魔力を使っても誰からも襲われないようにするためだった。
 そのために、なるべく彼女が出掛ける時も見守るようにしていたのだ。


 そして、彼女が魔力を使った途端に沼で追ってきた奴もいる事から、すぐに彼女が魔女になったのは広まったのだろう。力を持つ前にとやってくる者は多いはずだ。
 あいつかもしれない。
 そう思い、警戒しながら玄関のドアを開けた。

 するの、結界ギリギリの門の前に姿勢正しく立っている男がいた。


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