鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする
「希海……どこ行くの?お店じゃなかったの?」
「店じゃない。ここ」
「ここって………」
希海が指差した場所。
そこは、階段下の空いたスペースだった。けれど、そこには何もないただの壁だった。木製の少し古びた壁があるだけだった。
「まぁ、見てて」
変哲もない壁に手を当てた希海は、ゆっくりと呪文を唱え始めた。すると、突然壁が光り始め、人一人がやっと通れるほどのドアが現れたのだ。壁と同じ木製のもので、取っ手は少し古びた金属で出来ていた。まるで、そこには昔からドアがあったかのように、とても馴染んでいた。
「………こんなところに部屋があるなんて知らなかった………」
「花里家と黒鍵家の魔女しか使えない呪文だ」
「………ここは………」
「魔女の部屋。ようこそ、新米魔女さん」
そう言うと、希海はドアをゆっくりと開けてくれる。そして、ドアを開けてにこやかに微笑み空澄を部屋の中へと促してくれた。